歩き遍路へ
この手紙をもって、僕の素人遍路としての最後の仕事とする。
まず、僕の病態を改善するために、薬師如来に肉刺治癒をお願いしたい。
以下に、肉刺治療についての愚見を述べる。
肉刺の根治を考える際、第一選択はあくまで水抜きであるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には僕自身の場合がそうであるように、発見した時点で転移や肥大をきたした進行症例がしばしば見受けられる。
その場合には、テーピングを含む全身治療が必要となるが、残念ながら、未だ満足のいく成果には至っていない。
これからの肉刺治療の飛躍は、水抜き以外の治療法の発展にかかっている。
僕は、君がその一翼を担える数少ない遍路であると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君には肉刺治療の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、肉刺による歩行困難が、この世からなくなることを信じている。
ひいては、僕の経験談を読んだ後、君の遍路準備の一石として役立てて欲しい。
空海は弘法大師なり。
なお、自ら通し歩き遍路の第二線にある者が早期発見できず、歩行不能の肉刺で一日休んでしまうことを、心より恥じる。
南無大師遍照金剛