白い巨豆

歩き遍路へ

この手紙をもって、僕の素人遍路としての最後の仕事とする。
まず、僕の病態を改善するために、薬師如来に肉刺治癒をお願いしたい。
以下に、肉刺治療についての愚見を述べる。
肉刺の根治を考える際、第一選択はあくまで水抜きであるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には僕自身の場合がそうであるように、発見した時点で転移や肥大をきたした進行症例がしばしば見受けられる。
その場合には、テーピングを含む全身治療が必要となるが、残念ながら、未だ満足のいく成果には至っていない。
これからの肉刺治療の飛躍は、水抜き以外の治療法の発展にかかっている。
僕は、君がその一翼を担える数少ない遍路であると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君には肉刺治療の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、肉刺による歩行困難が、この世からなくなることを信じている。
ひいては、僕の経験談を読んだ後、君の遍路準備の一石として役立てて欲しい。
空海は弘法大師なり。

なお、自ら通し歩き遍路の第二線にある者が早期発見できず、歩行不能の肉刺で一日休んでしまうことを、心より恥じる。

南無大師遍照金剛

第一番奥之院 東林院 (種蒔大師) – [Tōrin-in (Tanemaki-Daishi)]

霊山寺前の門前一番街から、タクシーで東林院へ。
とてもお遍路さん慣れした運転手さん。息子さんは、俺と同じく福岡市内に住んでいるそうだ。
楽しく話をしながら、10分ほどで東林院に到着。代金の端数190円を接待していただいた。お礼の納札第一号。

俺以外にお遍路さんはいないようだ。本堂と大師堂で読経・納札し、納経所へ。
納経所には誰もおらず、呼んでもどなたも出てこないので、留守かなと思ったらちょうどご住職が帰ってきた。
俺と同じくらい、30そこそこの若いお坊さんだ。

東林院は四国八十八箇所霊場第一番奥之院であると共に、新四国曼荼羅霊場第一番でもある。
御朱印も、奥の院用と曼荼羅用の2種類あるそうだ。
今回は曼荼羅用の納経帳(2,000円)を新たに購入し、それに曼荼羅の御朱印をいただくことにした。

「福岡からお越しですか?福岡には一度行ったこどがあるんですよ。中洲ってところの近くでラーメン食べましたよ。こんどは水炊きを食べてみたいんですけどねぇ。坊主なのにねw」
年季の入った大きな硯と筆で、丁寧に墨書・御朱印していただいた。
御影札は、曼荼羅用と奥之院用の2枚いただいた。

「お時間ありましたら、ご本尊の薬師如来をご覧になりますか?」
あれ、さっき読経したとき、本尊は愛染明王と札が出ていた気がするが…
よくよく聞いてみると、本来の本堂は大師堂の左隣にある薬師堂だという。
したがって、本尊は薬師如来。勘違いされるお遍路さんも多いそうだ。

かつての本堂は火災で焼失し、現在の薬師堂として小さく建て直されたという。
正面の大きな鉄筋コンクリート製の建物は「法要所」のような位置づけであり、この新本堂の本尊として愛染明王が祭られている。
本尊の薬師如来も、火災から守るためこちらに移されており、実質的な本堂としての役割には変わりないが。

今日は2番の宿坊泊まり。まだ時間はあるし、せっかくなので薬師如来を拝観させて頂く。
とその前に、本来の本堂である薬師堂で手早く読経を済ませてくる。
中央の祭壇に愛染明王。右の祭壇に薬師如来。
薬師如来は重要文化財であり、前面には紫外線を防ぐために遮光パネルが取り付けられている。
正面からだとサングラスを掛けて見ているようだが、右の柱の隙間から見るとよいと住職に教えていただいた。

種蒔大師 本堂(薬師堂)
種蒔大師 大師堂
種蒔大師 弥勒菩薩

四国八十八箇所霊場 第一番奥之院
八葉山 神宮寺 東林院 (種蒔大師)
徳島県鳴門市大麻町大谷山田59
TEL : 088-689-0053